森林経営管理制度とは

森林経営管理制度とは、所有者が管理できなくなった私有林を、市町村が所有者から管理委託を受け、採算が見込める森林は林業者へ再委託へ、できない森林は市町村が自ら間伐・保育などを実施して環境林として守る仕組み。

森林環境譲与税との関係

森林経営管理制度は、森林環境譲与税を遣って実行する。

譲与税の主な使途:

  • 意向調査
  • 森林境界明確化
  • 間伐・作業道整備
  • 人材育成(森林経営管理士等)

制度の基本構造(3段階)

① 市町村が調査・意向確認  森林経営管理制度は、所有者が市町村に森林経営管理を委ねる意思があるかどうかを確認する制度であり、所有者の管理能力の有無を判定する制度ではない。

市町村が森林所有者に対して、

「この森林について、
市町村に森林経営管理を委ねることを希望しますか。」

(回答例)

  • 希望する
  • 希望しない
  • 今回は判断しない

「判断しない」の場合は委託契約は不成立

② 管理できない森林を市町村が引き受ける

  • 管理経営を希望する、委ねたい と回答した場合、

👉 市町村は、当該契約に基づき、森林経営管理法の定めるところにより、当該森林の経営管理を行う。

③ 市町村は林業者へ再委託 or 市町村が直営管理

  • 採算が見込める森林
     → 意欲と能力のある林業者に再委託(集積・集約化)
  • 採算が見込めない森林
     → 市町村が間伐・保育などを実施(環境林として管理)

委託契約書に入れるべき「了解条項」の案

(管理方法に関する了解)
第○条
森林所有者は、本契約に基づき市町村が当該森林の経営管理を行うに当たり、
当該森林の立地条件、林分状況、採算性、担い手の有無等を総合的に勘案して、
市町村が、森林経営管理法に定めるところにより、
管理方法を選択することについて、あらかじめ了解する。

(管理方法の類型)
第○条の2
前条の管理方法には、次の各号に掲げる方法が含まれるものとする。
一 森林経営管理実施権を設定し、意欲及び能力のある林業者により施業を行う方法
二 当該森林について、市町村が間伐、保育その他必要な管理を行う方法

(第三者による施業に関する了解)
第○条の3
森林所有者は、前条第一号の場合において、
市町村が森林経営管理法に基づき、
第三者である林業者に施業を行わせることについて了解する。

(管理方法の見直し)
第○条の4
市町村は、当該森林の状況の変化その他合理的な理由がある場合には、
管理方法の見直しを行うことができる。

2 前項の見直しに当たっては、
あらかじめ森林所有者にその内容を説明し、
意見を聴取するものとする。

(説明及び情報提供)
第○条の5
市町村は、本契約に基づく森林経営管理の内容について、
森林所有者から求めがあった場合には、
管理の状況及び今後の方針について、
合理的な範囲で説明を行うものとする。

採算が見込めるかどうかは、
林分条件、地形、インフラ、収益性及び担い手の有無等を総合的に勘案して判断し、
経営として成立する森林については林業経営体に再委託し、
経営が困難な森林については、市町村が公共的観点から必要な管理を行う。


【A】採算が見込める森林(再委託が合理的)

次の要素を総合的に満たす場合

1️⃣ 林分条件(物理的条件)

  • 樹種:スギ・ヒノキ等の用材向き
  • 林齢:概ね30~60年程度(間伐・主伐適期)
  • 面積:
    • 単独で概ね5ha以上
    • 又は周辺森林と一体で集約可能
  • 地形:
    • 急峻すぎない
    • 作業可能な傾斜(概ね30度以下が目安)

2️⃣ アクセス・インフラ

  • 林道・作業道が既存 or 整備可能
  • 集材距離が過度でない
  • 土場設置が可能

3️⃣ 市場・収益性

  • 木材価格を前提に黒字又は収支均衡が見込める
  • 補助金を活用した場合に事業成立
  • 複数年施業計画が立つ

4️⃣ 担い手の存在

  • 意欲と能力のある林業経営体が存在
  • 長期的施業に対応可能
  • 労務・機械体制が確保されている

👉
「経営として回るか」が中核判断。


【B】採算が見込めない森林(市町村管理=環境林)

次のいずれかが明確に該当する場合。

1️⃣ 物理的制約が大きい

  • 極端な急傾斜・崩壊地
  • 面積が小さく集約困難
  • 林道整備が非現実的

2️⃣ 経済性が成立しない

  • 木材価値が低い
  • 施業コストが収益を恒常的に上回る
  • 補助金を前提にしても赤字

3️⃣ 担い手が存在しない

  • 引き受け手がいない
  • 技術的・安全面で対応不可

4️⃣ 公益的価値が優先される

  • 災害防止(山腹崩壊防止)
  • 水源涵養
  • 集落・道路保全
  • 生態系・景観配慮

👉
「経営」ではなく「管理(公共的保全)」が合理的


判断プロセス(実務フロー)

ステップ1:技術的・経済的評価

  • 林況調査
  • 収支試算
  • インフラ確認

ステップ2:担い手意向確認

  • 林業経営体へのヒアリング
  • 再委託可能性の有無

ステップ3:総合判断(記録必須)

  • 採算性
  • 安全性
  • 公益性
  • 継続性

👉
判断理由は必ず文書化
(後の説明責任・監査対応のため)


誤解してはいけない点(重要)

  • ❌ 「赤字=すべて市町村管理」ではない
  • ❌ 「黒字=必ず再委託」でもない
  • 集約・補助・段階施業により判断は変わり得る
  • ⭕ 同一森林でも時点によって区分が変わる

採算が見込めるかどうかは、
林分条件、地形、インフラ、収益性及び担い手の有無等を総合的に勘案して判断しており、
経営として成立する森林については林業経営体に再委託し、
経営が困難な森林については、市町村が公共的観点から必要な管理を行っています。